【書籍レビュー】音楽ビジネス革命~残響レコードの挑戦~

音楽ビジネス革命~残響レコードの挑戦~

今回は先日読了した本で、te’のギタリスト河野章宏氏の著書「音楽ビジネス革命~残響レコードの挑戦~」を紹介したいと思う。

導入

最近私はレーベル業に興味を持っている。

”レーベル”というものを意識することはこれまであまりなかった。アーティスト単位で好きという感覚だったし、好きなバンドの所属レーベルを聞かれても正直あまり答えられない。

だが自分が将来行いたい音楽事業について想像したとき、アーティストの良さを最大限引き出したり世の中に売り出したりするような取り組みは是非ともやってみたいと感じたため、レーベル業について一通り調べてみるのも良さそうだと思ったのだ。

そこでレーベル業に関する本を探してみたのだが、そこでヒットしたのがこの本だった。

著者の河野氏はte’のギタリストを務める傍ら、残響レコードの設立と現在までの運営を行ってきた人物である。残響レコード自体は昔から聞きなじみがあり、People In The Boxやcinema staffなど、好きなアーティストが所属しているレーベルとして認知していた。そんな残響レコードの創設者が書いた本と知り、すぐにamazonで注文したのだった。

本の内容

この本はレーベル運営に関するハウツー本という面もあるが、主に河野氏が残響レコードを通して培った音楽業界で渡り合うための生存戦略や理念、そして仕事、音楽、人生に対する姿勢などについて熱く書かれていた。河野氏の実体験に基づいた内容なので、本に入り込みやすいとも感じた。

ニッチな音楽性でも活路を開く戦略

te’もそうだが、河野氏はポストロックやインスト音楽が好きで、そういったジャンルの音楽をもっと浸透させたいと考えていたようである。こういった”秀逸だがニッチで日の目を浴びづらい音楽”を売り込むため、以下のような戦略をとっている。

海外での販路をしっかり開拓する

日本はある程度人口がいるため国内だけで一定規模のマーケットが成立するが、そのような閉鎖的なマーケットよりも海外に対してアプローチすることの重要性を筆者は指摘している。

これはもちろん販路を開拓して売り上げを伸ばすためでもあるが、海外のレーベルとの交流や海外への売り込みを通じて様々な要素を吸収することで、残響レコードが抱える音楽性がもっと世界に通用するようになる効果があったようだ。筆者が得意なポストロック・インストといった音楽性も、海外へのアプローチにおいて優位性を持っていたようだ。

国内のターゲットを絞る

残響レコードの日本でのターゲットは「オルタナティブやグランジのブームをリアルタイムで経験した20代後半から30代のロック好き」に設定していたとのことである。これは、経済的に余裕が出てくる年代で音楽に投資してくれることが見込めたからだそうだ。また、その少し下の年代(10代後半から20代前半)も、ちょっと背伸びしたい年頃で「難しいけどかっこいい音楽性」という残響のキャラクターに惹かれるであろうことも期待していたとのこと。(そして実際その年代にも人気がある。)

音楽性にこだわる

残響からリリースするものについては一切妥協しないようで、河野氏が良いと思えないものはリリースしないらしい。これは、中途半端なものをリリースすると、そのアーティストはもとより、残響レコードや残響レコードに所属するその他のアーティストの信頼性まで揺らいでしまうからである。また、同様の理由で「残響っぽくはないけど売れそうなアーティスト」の作品をリリースすることも基本的に行わないとのこと。ビジネスとしての成功でなく、あくまで”残響レコード”を信頼して期待している人々を裏切らないことを優先している。こういったことで「残響に所属しているなら良いアーティストに違いない」「残響から出た作品だから買ってみよう」という性格の(つまりレーベル買いできる)レーベルになれたのだと思う。

このような内容を読んで改めて、信頼を築くことの大切さと、そのために誠実に物事に取り組むことの大切さを感じた。これはレーベル業に限らず仕事全般、はたまた人生全般の話である。誠実な仕事や誠実な人にはおのずと信頼が寄せられ、「この人なら大丈夫」「この人ならやってくれる」「この人になら賭けてみたい。もしそれで損したって別に構わない。」と思われるようになっていくものではないだろうか。

私も自分や他人に正直に生きることは意識している。たまに自分に正直すぎて他人に迷惑を掛けてしまうこともあるが…。

河野氏のビジネス哲学

河野氏が本の中で掲げるビジネス哲学をいくつかピックアップしてみる。

  • 当たり前を当たり前だと思わない、常に疑問を持つ
  • 短期・中期・長期の計画を立てて活動する
  • 作り手の想いやメッセージを伝えることが販促になる
  • 本を通じて勉強する、色々な人と話す
  • 何事も本気で取り組む

河野氏は単身でアメリカのパイロット学校に留学した経験や、様々な分野でのアルバイト経験を持っている。おそらく、そもそも人よりも行動力と広い視野を持っている人物である。だがte’におけるバンド活動や「音楽業界を変えていきたい」という信念のもとでの残響レコード運営とともに、止まることなく成長を続けてきたことで、上記のような内容が最重要なポイントとして析出したのだろう。

まとめ

本のレビュー記事を書くのは初めてだが、その本のポイントを振り返る意味でも、自分にとって有意義な時間になった。正直本の良さが伝わったか不安なので、もっと伝えることがうまくなりたい。

もちろん上記の内容は自分が本からピックアップしたものなので、この本が気になった方は手に入れて読んでみてはいかがだろうか。

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